第40巻第1号                2026/10/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行 発行責任者 守一雄
(kaz-mori@cc.tuat.ac.jp)
https://kaz-mori.jp/dohc/

 今年は台風が例年になく多かったこともあって、首都圏では雨の被害も出たようですが、山に囲まれた長野は幸いにも農作物を育てるために必要な程度の降雨量に留まり、秋らしい秋を楽しみました。先月は以前から一度は行きたいと考えていた埼玉スタジアム2002まで車で行って、浦和レッズとジェフ千葉の試合を夫婦で観戦しました。試合結果は残念でしたが、スタジアムは壮観でしたし、近くのホテルも快適で無料の朝食も予想外に美味しいものでした。今月もサッカー観戦に出かける予定。(守 一雄)


(c) 日本評論社

【これは絶対面白い】

時枝 正『こどもの眼・おとなの頭』日本評論社(¥2,200)

 書名や表紙のイラストに騙されてはいけない。副題に「数理にあそぶ」とあるように、アメリカ・スタンフォード大学の数学教授が『数学セミナー』に十年以上前に連載したコラムを単行本化したものである。数学者の気楽な息抜きの話として書かれたものだろうと思われるが、元々の想定された読者が数学愛好者なのだから遠慮なく数式もバンバン登場する。もっとも、全部で24回のコラムは独立しているので、わかるところだけを読めばいいし、著者が自ら描いたイラストも満載されていて、「まえがき」には「ただ挿し絵を楽しむのも結構」と書かれている。確かに絵も上手い。

 この「まえがき」と24回のコラムの最後に付録として「はるいちばん」という著者が数学者となるまでの歩みが書かれていて、最初にそれを読んで驚いた。スタンフォードの教授になるような数学者は、子どもの頃から数学が得意で、中学高校でも「数学オリンピック」とかで金メダルを取ったりしているのかと思ったら、子どもの頃は絵が好きで6歳で個展まで開いていて、その後も15歳でフランスの高校へ留学しているのだが、絵の道はやめてしまい、ヨーロッパ古語を学び古典語学者への道を進んだのだという。帰国後は上智大学で古典語の研究をしていたが、ロシアの理論物理学者ランダウの伝記を読んだときに、ランダウが息子に「dx/sinxの積分もわからないのか」と詰問したというエピソードに出会い、自分(=時枝氏)もこの「dx/sinxの積分」がなんだかわからなかったことに奮起して、なんと独学で数学を学び始めたのだという。しかも、数学を学ぶ教材にしたのがロシア語で書かれた問題集で、読み進めるうちにロシア語と数学を同時にマスターしてしまったという。その後は数学を正規の課程で学ぶためにオックスフォード大学に学士入学し、さらには米プリンストン大学で数学の学位を取得したのだそうだ。そして今はスタンフォード大学の教授である。そんな経歴の数学者がいるなんて、嘘だろうとしか思えない。

 というわけで、異色の数学者のこんな嘘のような経歴に惹かれて、本書を読むことにした。どれも易しい話題から入るのだが、すぐに理解できないところが出てきてしまう。それでも、この本はぜひDOHC月報の11月号で取り上げたいと決めて、10月中になんとか24のコラム全部を少しずつでも「齧る」ことを目指した。しかし、10月中には読み終わらず、11月にずれ込んでしまった。ほとんどが消化不良だった本を「これは絶対面白い」として紹介することには躊躇いもあったが、身近ないろいろな現象の中に数学が隠れていることがわかって、というか「わかったように感じられて」嬉しかったので予定通りに紹介することにした。最初の回のクリップの手品とかメビウスの帯のいろいろな切り方とか、年末に孫たちが帰省してきたときに、実演して一緒に遊べるネタも仕入れられた。(守 一雄)

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